犬のしつけより、難しいのは、飼い主の意識改革だ。
犬の問題行動のほとんどは、飼い主に原因があるのではないかと思う。
80歳から犬を買い始めた私の父を見ているとそう思う。
動物は皆、個性があるから、大人しい子もいれば、ヤンチャな子もいるのは当たり前なのだが、持って生まれた性格そのものよりも、育った環境や育てた人の方が影響を与えると思う。
そして、犬は人を見分ける。安心できる人なのかどうか、要求を聞いてくれる人なのかどうか。
人の強さも見分ける。力強さ、心の強さを見分け、従うべきか、従わせるべきかを判断する。判断というより反射、反応と行った方が近いかもしれない。本能的に反応しているのではないかと思うのだ。
犬のしつけの手法は、褒めて伸ばす方法や、悪いことをした時は叱ったり無視したりする方法など色々あるが、それらを実践しなければ意味がない。
犬にとっては、叱られているのか、褒められているのかがわからないと、情緒不安定になってしまうそうだ。
私の両親は、犬に対して、褒めてもいないし、叱ってもいない。そして、犬の要求に答えて、甘やかし放題だ。
いくら説明しても、両親の態度は変わらない。変われないのか、変わろうとしないのか。
そんなわけで、コウは問題行動のオンパレードだ。
飛びつく、吠える、夜中の要求泣きが泣き止まない。そして噛みつく。しかも、本気噛みだ。
父は、何度も強く噛まれている。
そして「何で噛むんだろう」とボヤいている。
いくら説明しても聞く耳を持てないみたいだ。
私の家で預かっている時は静かないい子なのに、両親の家へ戻った瞬間に、悪くなっちゃうのだ。
犬はしつけが効くのに、爺さんは全く変わらない。噛まれるのが怖いから、犬を触ることもできないのだ。
おむつ替えも、手袋をして、首を抑えて、婆さんと喧嘩をしながら行う。抱っこをするのも怖いので、私が作った車椅子にも乗せることができず、車椅子は荷物置き場になってしまった。
コウが交通事故にあって、オムツの交換が大変になったある日のこと、「もうコウに死んでもらいたい」「事故の時に死んでしまえばよかったのに」という言葉を漏らした。爺さんはそういう人間なのだ。
そして、とうとう、母までも噛まれて大怪我を負った。大晦日の日だった。私は、コウを引き取る決心をして自分の家に連れて帰った。
それまで、コウを引き取ることに消極的だった夫も受け入れてくれた。
そして、2020年はカウントダウンとともに、コウのオムツ替えの作業が始まった。