父のこと
父は短気ですぐ怒る。いつも喧嘩腰だ。
そして頑固。
マイルールがあって、それから外れるとイライラして癇癪を起こす。
いつも同じ時間に同じことをしないと気がすまない。
人に指図ばかりする。
いつも同じ話を繰り返す。
喋りは一方的で、相手がどう思っているかなんて関係なくて、一人で喋り続ける。
こちらから投げかけた質問には答えない。
つまり、言葉のキャッチボールができないようなのだ。
こんな父だから、会いたくないのだが、犬が心配で診に行っている。
東京に住んでいた両親は、私の家から十分ぐらいのところに引っ越して来たので、問題が起きればすぐに駆けつけられる距離にいる。
犬のしつけを通じて、改めて父と接すると、父の独特な気性が見えて来た。
もしかしたら、アスペルガー症候群?
調べれば調べるほど、該当しているような気がする。今さら、病院へ連れて行っても治らないだろうし、本人に伝えても気分を害するだけで理解しようとしないだろう。
しかし、アスペルガーなのかもしれないと思うと、
逆に気が楽になった。だから、犬の気持ちが読めなくて、しつけができないのかもしれない。
父は、人や犬を理解するのができないけれど、
人に理解されずに生きてきたのかもしれない。
そして、発達障害は、犬にもあるそうなのだ。
生まれながらに攻撃的で、スイッチが入ると激しく噛み付いてしまう犬もいるそうなのだ。
もしかしたら、コウもそうかもしれない。
うつろで寂しげな目をした時、
いつもより、目の色が茶色く見える時、
「どうしたの?コウちゃん」などと手を出して触ろうとすると、いきなり噛み付いてくる。その速さったらない。
鼻にシワを寄せたり、うなったりしてから噛むのではなく、瞬時に噛んでくる。
または、腹を出して、触らせていたかと思うと、突然噛んでくる。
夫いわく、「性格も脳も悪い」。
父は、「こんな噛む犬に出会ってしまって、巡り合わせが悪い」と言うが、側から見ていて、明らかに、噛み犬になるように習慣付けてしまった父が言うべき言葉ではない。
「噛むから、保健所行。」というのはあまりにも自分勝手で無責任だ。
父も本心で言っているのではないと思いたい。
私に引き取ってもらいたいけど、借りを作りたくないから、そんな事を言っているのかもしれない。
発達障害の人はその程度も様々だが、子供の10人に1人は発達障害とささやかれるほど、かなりの割合でいるらしいのだ。
先天的な脳の機能障害は犬にも同じようなことがあると言えるかもしれない。
だが、犬はもともと、噛む生き物だ。オオカミのDNAが色濃く残っている柴犬は、噛むのが当たり前なのだと思う。
私は、コウを見捨てない。
噛んじゃうことも含めて愛おしい。